シングル8の紙箱から撮影時期を推定する。
8ミリフィルムの撮影時期が紙箱などに記載されていなかったり、撮影内容から判明しないときに、現像後のフィルムのリールが収納されている紙箱が撮影時期を特定する手がかりとなることがある。とくにシングル8の場合、フィルムの現像はほとんど富士写真フィルムによる純正現像であったので、紙箱のデザインの変遷をたどることで撮影時期をある程度まで絞り込むことができる。
手許にあるシングル8のフィルムのうち、撮影時期が特定できるものを集めてみた。同じデザインの紙箱であればだいたい同じ時期の撮影と考えてよいだろう。ただし、次の点に留意すべきである。(a)撮影と現像との間に時間差があることがある。当時フィルムは高価であったから、1巻を間欠的に撮影することも珍しくなかった。あるいは、撮影後すぐに現像に出さないこともあっただろう。(b)現像所ごとに紙箱の切替えの時期が異なっていた可能性がある。(c)複数のデザインの紙箱が同時期に並行して用いられていた可能性がある。(d)映写・保管の過程で紙箱と中のリールが入れ替わってしまっていることがある。
(1)初期の紙箱
シングル8の発売当初(1965年)の紙箱(便宜的に「初期の紙箱」と呼ぶ。)。右端の青い箱がモノクロフィルム、右から2つ目の赤い箱がカラーフィルムで、標準的な大きさの紙箱(左端、7.7cm*7.7cm)よりひとまわり小さい(6.7cm*6.7mm)。後に同じデザインのまま標準的な大きさとなる(右から3つ目)。1960年代はこの初期の箱が使われたようである。シングル8の登場後もレギュラー8の現像は続いていたが、フィルムの種類によって紙箱が使い分けられたわけではないらしく、同時期のレギュラー8のフィルムも同じデザインの紙箱に収められた。映写の際の注意を促すため、上面と側面に「Single-8」の文字が警告色で記載されている。
(1-1)初期のモノクロフィルムの箱
特徴:モノクロフィルム、標準的な紙箱よりもひとまわり小さい(6.7cm*6.7mm)、紙箱裏面に「フィルム接合について」の説明。
撮影時期:1967年5月26日、1967年10月29日。
(1-2)初期のカラーフィルムの箱(小)
特徴:カラーフィルム、標準的な紙箱よりもひとまわり小さい(6.7cm*6.7mm)、紙箱裏面に「フィルム接合について」の説明。
撮影時期:1967年5月3日、1967年10月29日、1968年8月18日、1970年9月27日、1970年10月10日。
(1-3)初期のカラーフィルムの箱(標準)
特徴:カラーフィルム、標準的な大きさ、(1-2)と同じデザイン。
撮影時期:1970年11月22日、1971年5月16日、1971年7月30日。
(2)「レモンをもつ幼児」
特徴:モノクロフィルムは幼児の画像がモノクロ、カラーフィルムはカラーとなっている。紙箱裏面に「フィルム接合について」の説明。モノクロの紙箱上面には「FUJIFILM」、カラーの紙箱上面には「Single-8」の文字。
撮影時期:1972年8月(カラー)、1973年6月(モノクロ)。
(3)「幼児とひよこ」
特徴:カラーフィルム、紙箱裏面に「フィルム接合について」の説明。紙箱上面に「FUJICOLOR」の文字があるものとないものがある。
撮影時期:1974年5月、1974年7月29日。
(4)「シングル8のカメラを構える子ども、太陽、船」
特徴:カラーフィルム、紙箱裏面の上半分に関連商品の広告、差し込み部分に「マグネオストライプ」の広告。
撮影時期:1975年11月30日。
(5)「カチンコをもつカラスと女の子」
特徴:カラーフィルム、紙箱裏面の上半分に関連商品の広告、上面に「FUJICHROME」、差し込み部分に「マグネオストライプ」の広告。
撮影時期:1975年12月14日。
(6)「サウンドカメラを構える少年」
特徴:カラーフィルム、紙箱裏面の下半分に関連商品の広告、上面に「MADE IN JAPAN/by FUJI PHOTO FILM CO., LTD./TOKYO 106.」、差し込み部分に「マグネオストライプ」の広告。
撮影時期:1978年4月8日、1979年2月。
(7)「犬小屋を作る3人家族」
特徴:カラーフィルム、紙箱裏面に「ワンポイント撮影アドバイス」、上面にロゴ化された「Fuji」と「Single-8」、差し込み部分に広告なし。
撮影時期:始期不明、2013年9月30日の現像サービス終了時まで使われていた。