押上1丁目のすみ切り地区 東京の栞(123)
墨田区押上1丁目の東側(西側は東京スカイツリーと押上駅)を歩いていて、少し奇異な感じがした。区画が整然としているうえに、どの交差点も「すみ切り(隅切り・角切り)」がなされているのである。
「すみ切り」とは、交差点の見通しを良くし、自動車等が安全かつ円滑に進行することができるように、角地の隅を三角形に切り取って道路とすることである。自治体によって細部は異なるが、東京都の場合、幅員がそれぞれ6メートル未満の道路が交わる角敷地は、敷地の隅を頂点とする長さ2メートルの底辺を有する二等辺三角形の部分を道路としなければならない(東京都建築安全条例第2条)。
都内についてすみ切りを明文化した東京都建築安全条例の制定は1950年なので、それ以前に(無秩序に)都市化した地域ではすみ切りがなされていないことが多い。通常、建物を建て替える際に順次すみ切りが実施されるのであるが、押上1丁目の東側はある時期に区画整理とすみ切りが一斉実施されたらしく、近くの京島地区と対照をなしている。
1957年10月10日撮影の航空写真(上)ではまだ区画整理とすみ切りが実施されていないが、1963年6月26日撮影のもの(下)では完了している。出典:国土地理院「地図・航空写真閲覧サービス」
押上1丁目の東側では新しい建物だけでなく、古い木造モルタル造の建物もきちんとすみ切りがなされている。しかも、条例の最低基準(2メートル)を上回る、余裕をもったすみ切りである。当時、まちづくりに意欲的な人物がいたのだろうか。
押上1-26-6。
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すみ切りされた狭小な角地に立つ「工藤商店ビル」。東京都墨田区押上1-43-12。2018年4月30日。